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刑事訴訟法改正~被疑者国選制度の全勾留事件への拡大

 本日6月1日から、従前から段階的に進められている刑事訴訟法改正の一部が施行されます。

 今回施行される主な内容は、以下のとおりです。

①被疑者国選制度の全勾留事件への拡大

②協議・合意制度と刑事免責制度

③刑事裁判で別室の映像や音声を法廷につなぐビデオリンク方式による証人尋問の拡大

 このうち②については、「日本型司法取引の導入」であり、事件の黒幕の刑事責任追及につながることが期待されるなどとしてマスメデイアでも広く報道されています。

 しかし、この制度については、主導権を握っている最高検察庁が「合意制度の運用に関する当面の考え方(最高検察庁依命通達)」を出しており、「合意制度を利用するためには、本人の事件についての処分の軽減等をしてもなお、他人の刑事事件の捜査・公判への協力を得ることについて国民の理解を得られる場合でなければならない」としており、かなり限定的な運用方針を取ることを明らかにしています。

 当面はホワイトカラーによる経済事犯などに限定して運用されていくのではないかというのが法曹界での大方の見方です。

 他方で、被疑者国選制度の全勾留事件への拡大は、一般の方には馴染みが少ないでしょうが刑事手続の実務に与える影響はより大きいと思われます。

 捜査機関に身柄拘束(逮捕・勾留)された場合には、お願いすれば国選弁護人が付いてくれるというのは一般の方も何となく知識・イメージがあると思います。

 しかし、実際には従前は被疑者(起訴前の容疑者)段階では、死刑または無期、短期3年を超える懲役か禁錮に当たる比較的重大な事件で、勾留状が出された被疑者にしか国選弁護人は付きませんでした。

 改正法では、これを拡大して法定刑による制限を無くし、裁判官による勾留状が出された全ての被疑者が国選弁護制度の対象となりました。

 これにより、逮捕後、勾留(原則10日間の比較的長期の身柄拘束)に移行した場合には罪名に関わらず、国選弁護人を請求することができることになりました(ちなみに、従前は短期3年未満の罪で勾留された被疑者に対しては、弁護士がお金を出し合って作った基金から弁護士費用を出すことによって、被疑者が事実上無料で私選弁護人を付けることができる援助制度を作って対応していました)。

 日本以外の先進国では、「被疑者が身柄拘束されたら弁護士が付くのは当然」「捜査機関の取り調べにも弁護士が立ち会うのは当然」という国が多いのですが、日本では被疑者の国選弁護人の選任権は限定されており、弁護士の取り調への立会いは現在でも一切認められていません。

 残念ながら日本の刑事司法制度は世界基準から見るとまだまだ遅れている部分が多々あるのです(その背景には、日本人の「お上」への絶大な信頼感があるように思います)。

 今回の改正は、「被疑者が身柄拘束されたら弁護士が付くのは当然」という世界基準の体制実現に一歩近づくものといえます。

 なお、今回の改正法によっても、勾留の前段階である逮捕段階では国選弁護人の選任権が認められていませんので、まだまだ道半ばというところでしょうか。

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